芥川賞作家作品「何もかも憂鬱な夜に」のあらすじと感想(ネタバレあり)
芥川賞作家、中村文則(なかむら ふみのり)の6冊目の本である「何もかも憂鬱な夜に」。
中村文則は、アメトーークの読書芸人でも、ピース又吉やオードリー若林に何度も紹介されるほどの、人気の作家です。
そんな彼の、個人的にも重なる部分を描いたという本作品の、あらすじと感想をまとめました。
「何もかも憂鬱な夜に」のあらすじ(ネタバレあり)
主人公は、犯罪者を監視する刑務官。
児童養護施設で育った過去を持ち、そして、仲の良かった友人が自殺をするという経験も持つ。
そんな彼は生きていく中で、自分では抑えきれない衝動が何度も起こってしまう。
ついかばってしまった受刑者に裏切られた時、自殺した友人からの手紙を読んだ時。
しかし、その衝動をかろうじて理性で抑え込みながら生きている。
それは、児童養護施設の施設長が必死に自分と向き合い続けてくれたことが大きいと感じる。
あの人を悲しませたくない。という思いがあるからだ。
その後、死刑が下された受刑者と触れ、生きることを諦めようとする姿を目の当たりにする。
「未来はどうであれ、今、ここにいることに価値があるんだ」とあの人にやってもらったことを、今度は自分がやる決心をする。
「何もかも憂鬱な夜に」の感想
初めにこの本を手に取った時、犯罪、自殺、暴力・・・と暗い話が続くので、最後まで読むことができませんでした。
そして、少し時間を置き、この本の世界観を覚悟し、心を整えてから再挑戦した結果、やっと最後まで読むことができました。
死刑制度、度々起こる衝動的な負の感情、犯罪はこれまでもこれからもゼロにはならない現実に、「人間とは?」を考えさせられました。
人間誰しもが持っている「闇」の部分を、深く深く掘り下げ、真正面から向き合う。
しかし、その闇を見つめた先に光がある。
世界にはまだまだ知らない美しいものがあるし、感動するものがたくさんある。
それらに触れることが命を使うこと。そうやって人間はつながってきたし、これからもつながっていくのだとこの本は教えてくれました。